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初めて公開された遺品整理

店があり、浴槽や便器からボイラー、水道、調理用電熱器にいたるまで、修理や取り替えに必要な部品を売っている。
また、図書館にいけば、どのようにそれらの作業をするかを教えるハウツーガイドが並べてある。 これらの本を借りて来れば、素人でもひと通りの手順がマスター出来るようになっている。
イギリス人は、週末の休みには、DIYに行って必要な器材を買い込み、ハウツー書で仕入れた知識を生かしつつ、自分の家の手入れをするのである。 そのようにして、金をあまりかけずに、自分の持ち家のメインテナンスに努める。
手塩にかけた家には一層の愛着が湧くこと必定であり、同時に家の価値を増加させることにもなる。 イギリス人にとって、家は自分たち家族が住む城であるばかりでなく、大切な資産なのである。
しかし、そのような実利的なことばかりではない。 私は、自分の家の裏庭に立つ林檎の木の手入れをしながら、春の白い花、秋の果実、その後のおびただしい落ち葉と、冬の裸木の姿に、確かな時の流れを感じ取る。
イギリスは日本ほど四季がはっきりとしないが、だからこそ、庭の草木や花々の変化にそれを確かめ、楽しむのである。 また、玄関のドアのペンキ塗りや、窓の修理など、古い家の補修に時間をかけることも、イギリスにおける生活の大切な要素である。
家そのものが持つ歴史の中に、住む人間が同化し、家と対話しながら、現在の持ち主として自分自身が、その家の新たな歴史を刻んでいく。 こういうところに、イギリス暮らしの醍醐味がある。

それはある意味では、わずらわしいことだが、暮らしを豊かにすることでもある。 日本企業の駐在員は、会社が借りてくれた住宅に住んでいる。
家の補修は家主の仕事であり、入居者が勝手に手を出すことは許されない。 しかし、中には、窓の拭き掃除から庭の手入れまで業者にまかせて、自分は何もしないことを自慢する人がいる。
これは実にもったいない話である。 イギリスに住みながら、この国の暮らしの醍醐味を体験するせっかくの機会を、みずから放棄しているようなものだ。
作家のI慶子氏のベストセラーに『F豊かなイギリスの家便利で貧しい日本の家」(という本がある。 この本の記述には、永くイギリスに暮らす者として、異論を唱えたい部分もあるが、主張の大筋には私も同意する。
彼女は次のように書いている。 「(イギリス人は)家を持った時から、何かにつけて自分の家に関わっていきたいと思っている。それが喜びであり、楽しみなのだ。イギリスでは、家を持った時からが始まり。家を持つことは、関わり続けること」それに対して日本人は、家を持つことを大きな目標とするが、そこで全てを終結させてしまい、その後、家との関わりを深めようとしない、と彼女は指摘している。


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